愛に乱暴

2024年8月公開

原作:吉田修一『愛に乱暴』(新潮文庫刊)
監督・脚本:森ガキ侑大
脚本:山﨑佐保子/鈴木史子
音楽:岩代太郎

製作幹事:東京テアトル/読売テレビ 
制作・配給:東京テアトル 
制作プロダクション:ドラゴンロケット
©2013 吉田修一/新潮社   ©2024 「愛に乱暴」製作委員会

NEW! 9/16(月・祝) 妻と夫の上映後トークイベント レポート

2024/09/17 17:02 up!

心無い夫を演じた小泉さん、撮影現場で江口さんに謝罪?!
「次は笑顔で話せる夫婦役を!」

主人公・人妻の桃子の幸せな日常が次第に崩れていく様を描いた本作。上映後のトークショーに現れた江口さん、小泉さん、森ガキ監督の3人。不倫する夫・真守役を演じた小泉さんは「ちょっと皆さんの視線が痛いです…すみません、あんな真守で!」と開始早々に謝罪し笑いを誘いました。

“妻と夫のトークショー”と銘打たれたトークイベントにちなみ、桃子と真守の夫婦像の創作について話が及ぶと森ガキ監督は「結婚8年目の桃子と真守の夫婦について、江口さんと小泉さんそれぞれとお話して『こういう夫婦にするとよいかな』と作っていきました」と語りました。

小泉さんは「江口さんと夫婦役を演じられるのはすごく嬉しかったんですけど、なにせ妻を裏切る役なので…撮影中は江口さんに対する心苦しさでいっぱいでした。江口さんに『ごめんなさいこんな男で』と思わず謝ってしまったんですよね」とエピソードを話すと江口さんは「そんなことありましたっけ?」とケロッとした様子。「でもそれは孝太郎さんが悪いわけじゃなくて、本に書かれてあることだからしょうがないです」と江口さんがなだめると小泉さんは「それ!現場でもまったく同じこといってくれました」と嬉しそうに笑いました。続けて「孝太郎さんとは控室でずっと一緒だったのでいろんなお話をしたことは覚えています。映画のことじゃなく、趣味のゴルフとかラジオの話とか、全然関係ない話をずっとしていました」と本編のサスペンスフルな雰囲気とは反対に、和やかな撮影現場だったと明かしました。

これまでの清廉なイメージを覆し、妻を裏切り続ける男を演じた小泉さんは役作りについて「真守役を演じるのは苦しかったです。まだ僕は独身ですから、夫婦の生活の大変さとかは身に染みて分かっていないのですが、台本を読んだ時点でもう『これは息苦しい撮影になるな』と感じました」と振り返りました。

森ガキ監督は「小泉さんと事前にお話ししていたのは、真守は弱い人間だってこと。自分と正面切って向きあうことを避けてなにもかも隠したがる、自分に自信がない男を作り上げていこうと話合いました。現場ではボソボソ喋ってほしいとか、セリフの抑揚を抜きましょう、など細かい相談もさせていただきました」と撮影中にも綿密に練っていったといいます。

小泉さんは「僕が今まで出会ってきた人の中で、心ない返事をする人とか、最近離婚したなっていう人を思い浮かべて参考にさせていただきました。誰とは言えないんですけど(笑)」と笑い交じりに語りました。

 

またこの日は会場の観客からの質問にも答えていくティーチインの時間も設けられました。

小泉さんに対して「真守の日焼けあとがくっきりしていてすごく気になりました。あれは役作りなのかそれとも単にゴルフ焼けなんでしょうか?」と鋭い質問が飛ぶと「正直にお答えしますね」と前置きし「真守は毎朝ランニングする人物という設定があるわけですよ。つまり、日焼けをしていても問題ないんだな、と勝手に解釈しましてゴルフで存分に焼けてきました。監督ごめんなさい」とまたまた謝罪。森ガキ監督は「そうかなって思ってました(笑)でも小泉さんは大変な役を背負っていたので、ゴルフで癒されていたならなによりです」と優しく微笑みました。江口さんは「ちょっと焼け過ぎかなとは思っていましたけど、撮影の合間にも『ゴルフが人生だ』っておっしゃってたから。そう言われると何も言えないし…」と苦笑しました。

江口さんに対し「桃子は色んなものの匂いを嗅ぐクセがありましたが、印象に残った匂いはありましたか?」という質問が飛び出すと「家の匂いですね。あの家は実際に人が長年暮らしていて、生活の匂いがあったからそれをよく覚えています」と明かしました。さらに「小泉さんはどんな匂いがしましたか?」と聞かれると「孝太郎さんは…無臭でした。何の匂いもしなかったです」と答え、小泉さんは「ゴルフ帰りで汗臭くなくてよかった」と胸をなでおろしていました。

 

森ガキ監督には「不倫する真守にすがる桃子を見ていてイライラしましたが、もっと女性には違う選択肢があることを示したかったのでしょうか?」という質問が投げかけられ、監督は「そういう意図も込められています。もともと桃子は、自分を変えようと思ったらいくらでも変えられる人間だと思うんです。でも環境に縛られてそういった考えに至りにくくなってしまっている。女性もいろんな選択肢があると気付いてほしいなと思いながら、脚本を作っていきましたが、原作小説にはもっと深く書かれているのでぜひ読んでみてほしいです」と解説しました。

イベントの最後に「江口さんと小泉さんの演技も素晴らしいですし、僕にとっても自信作なのでぜひ2回3回と観ていただきたいです(森ガキ監督)」「きっと既婚者と独身者、男性と女性で感想が全く異なってくる作品だと思うので、いろんな感想が聞けたら嬉しいです。江口さんとはいつか笑顔で話せる夫婦役を演じたいですね(小泉さん)」「1年前に作った映画がこうやって上映されて、忙しい中皆さんがわざわざ劇場に見にきてくださることが本当に嬉しいです。私はこの映画とこの映画を一緒に作った人たちのことが大好きなので感謝でいっぱいです。本当にありがとうございました(江口さん)」と映画に寄せる思いを語り締めくくりました。