愛に乱暴

2024年8月公開

原作:吉田修一『愛に乱暴』(新潮文庫刊)
監督・脚本:森ガキ侑大
脚本:山﨑佐保子/鈴木史子
音楽:岩代太郎

製作幹事:東京テアトル/読売テレビ 
制作・配給:東京テアトル 
制作プロダクション:ドラゴンロケット
©2013 吉田修一/新潮社   ©2024 「愛に乱暴」製作委員会

第58回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭レポート<後編>

2024/07/08 18:05 up!

映画の読み取りレベルが高すぎる観客とのQ&A!

 

第58回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭(チェコ現地⽇程で6⽉28⽇〜7⽉6⽇まで)のメインコンペティション「クリスタル・グローブコンペティション部門」に選出された『愛に乱暴』は、現地時間7⽉4⽇(木)にワールドプレミア上映を迎えました。

レポート後編では、翌⽇に行われた現地映画祭参加者とのQ&Aの模様をご紹介いたします!

※カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭とは?
世界で最も古い映画祭の一つとして1946年から開催され、毎年世界中から200本の映画が上映されている。
クリスタル・グローブコンペティション部門は2000本を越える応募作品の中から選りすぐりの12作品が選出され、映画への優れた芸術的貢献に対して最優秀作品賞を始め5つの賞が授与される。

 

<レポート後編>

ワールドプレミア上映の翌⽇ 7⽉5⽇(金)には、Q&A付きの上映が行われました。こちらも416ある座席は即⽇完売!

上映が終了して森ガキ監督が登壇すると、拍手が沸き上がり質問を募るとつぎつぎと手があがりました。

観客からはまず「Q.主人公の桃子の演技が素晴らしかった。撮影中は演じるのが苦しかったのでは?」という質問に「A.桃子はどんどん追い込まれて崩壊していく役なので、後半になるにつれて撮影は苦しかったと思います」

「Q.桃子役のキャスティングはいつも組んで信頼している俳優をキャスティングしたのか?」
「A.江口さんとは以前ドラマとCMでご一緒したことはありますが、映画は初めてでした。すごく難しい役だったので、この役は江口さんじゃないとできないんですと、ラブコールしました」と最初に主演の江口さんについて次々に質問が上がった。

その後「Q.スクリーンサイズをスタンダードサイズにした理由は?」
「A. 主人公桃子の機微を、観客に彼女の目線と一緒になって感じてもらいたかった。余分な情報をなるべく入れずに彼女と一心同体になるようにスタンダードサイズにしました」

「Q.映画の舞台となる家はセットではなくロケ撮影なのか?」
「A.ロケができる家を探すのはめちゃくちゃ大変でした。母屋とはなれがあって、床下を掘ってもよくて、最後に家を××してもいいところという大変な条件を満たせる家を探すのに1年ぐらいかかりました」など映画の裏側に迫った質問が上がった。

さらに
「Q.チェコの離婚率は60%と⾮常に高い。主人公は中々離婚しないが⽇本は離婚しにくいのか?」
「Q.⽇本では女性が一度キャリアをリタイアすると復帰が難しいのか?」

「Q.映画にX(旧twitter)を使ったトリックが出てきたが、⽇本人はSNSをあまり利用しないイメージがあった。実際はどうなのか?」

など⽇本の社会への関心が高い質問も相次いだ。

また映画を深く考察しようとする質問も多く、
「Q.ラストシーンで桃子が着ていた服装が表す意図はなにか?」
「Q.主人公は夫の浮気相手という憎むべき相手に何故スイカを持って行ったのか?」
「Q.ゴミ捨て場が燃えているシーンにはどんな意図があるのか?」
など質問が次々と上がってきて、ここでも森ガキ監督は「映画の読み取り能力が高すぎる」と舌を巻いていた。

最後にタイトルの意味について質問された監督は
「人を好きになることは幸せなことなんですが、人を愛しすぎると人は狂っていく。愛の中に乱暴さがあり、乱暴さの中に愛がある、という物事は表裏一体、紙一重であることがタイトルに込められていると僕は捉えています」
と答えてQ&Aを締めくくりました。